路面温度観測調査のDXに挑む

地質調査など社会インフラに関する研究をしている東京大学生産技術研究所 桑野研究室。今回はアスファルトの路面温度を観測し、性質変化を研究するプロジェクトに携われた久野様に、CANDY Pi Lite LTEをどのようにご活用頂いたのかお聞きしました。

ー路面温度観測システムにCANDY Pi Lite LTEをご利用いただいているとお聞きしました。まずはシステム開発の背景を教えていただけますか?

(久野さん)
初めて調査工程を見たとき、人が現地に行って温度を測って紙に記録していくアナログな手順が当たり前でした。いわゆる工事現場で見るような風景です。元々プログラマだった私は、効率化できそうなポイントを目にするとシステム化せずにはいられない性分でして。「システム化すればかなりの効率化ができるのでは」と実行を決意。教授に提案し、全く前例がないものを実際に作ることになりました。

エンジニアとしての経歴を持つ、桑野研究室では異色の技術職員である久野 洵(くの まこと)さん。ご自身で様々なアナログ手法からデジタルシフトを実現してきた。

桑野研究室での研究内容

ー大学での研究用途とお聞きしましたが、どのような研究をなさっているのでしょうか?

(久野さん)
桑野研究室では社会インフラにおいて継続的に必要となる分野の研究を複数行っていて、私は地盤インフラを研究しています。
メインの相手は土。土に計器を刺したりセンサーで温度・水分量・柔らかさ等の変化を計測したりと、土質試験が多く必要になるアナログな世界です。

今回構築した路面温度観測システムはアスファルト相手ですが、山奥の地質調査などもあります。そういったケースだと、移動のコストや行ってみたら天候が悪化して正確なデータが測れない、といった大きな課題があります。

予算6万円での部材調達

ーなぜCANDY Pi Liteをお選びいただくに至ったのでしょうか?

(久野さん)
まず、必要な部材を予算内で集めるためにWeb検索で情報を集めました。

  • Raspberry Pi 4 Model B
  • 通信ゲートウェイ「CANDY Pi Lite LTE」
  • 固定IP対応のSIM
  • サーモグラフィカメラ
  • その他ケーブルなど

通信ゲートウェイを選ぶ際はいくつか候補と比較しました。
重視した項目は「ある程度安価なもので」「安心して使える」あたりですね。
候補に残った中でもっと安価なものもあったのですが、技適対応していないものが多かったため候補から落としました。

最後まで残った候補はUSB式の3Gモデムでしたが、「箱に入れたときの電波はどうなるのかに不安要素があったため、アンテナを引き回せるものを選ぶことにしました。結果、国産で技適対応していてアンテナ利用可能だった、CANDY Pi Lite LTEモデルを購入しました。

ーWi-fiを使わずにSIM回線を使ったのはなぜでしょう?

(久野さん)
観測場所は埼玉大学の敷地内だったのですが、屋外で無線LAN環境が整備されていないエリアだったので通信が不安定な懸念がありました。また、大学共通の環境だと他の要因を受けて通信できないなどのトラブルも不安要素だったので、SIM回線を必須要件としました。

サーモグラフィカメラだと下画像のようにペットボトルの温度は低いことが可視化される。CANDY Pi Lite LTEで数値化したデータをクラウド上に送るために活用いただいた。

CANDY Pi Lite LTEを使って良かったこと

ー実際に使ってみていかがでしたか?

とても満足しています。路面温度観測システムを作ってから問題なく使えており、現場に行く必要が出たのは一度だけで済んでいます。
今回は使いませんでしたが、Node Redベースでプログラミングできる開発環境があるのも便利だと思います。

システム化の反響

ーシステム化の反響はいかがでしたか?

共同で研究している方々からとても好評です。太陽光を使って日中省電力で動いているので、すぐに最新のデータを確認できるのがちょうど良いと聞きました。アスファルトって、50℃〜60℃で急激に質が変化するらしく、「ここだ!」という良いタイミングで計測する必要があるのだそうで。とても満足しています。

実際のアプリケーション画面。アスファルトの路面温度がリアルタイムで把握できるため大幅に効率化ができている。

今後の研究活動と期待すること

ー今後CANDY LINE製品へのご要望などいただけますか?

省電力で使えるもので、POSIX系準拠の製品があればと常日頃考えているところです。Arduino系に組み込めるLTE-Mモデルがあると嬉しいですね。1日乾電池で動くようになれば、利用シーンが拡がりますね。朝から日が暮れるまで通しで計測できればとても助かります。

ー今後の研究活動でもお役に立てそうなシーンはありますか?

最近はRaspberry Piに乗せられるアナログデジタルコンバータのボードを試作しています。Ardino系のGPSロガーにセンサー2〜3個つけて現場調査(山の中など)で使う想定をしています。現状は、逐一GPS計測+紙に手書き の手順が必要なのですが、GPSを計測したら自動的に記録されるようにシステム化を試行しています。今試行しているのはSDカードに記録する方法です。

ーSDカードでも事足りるものなのでしょうか?

できればクラウド化したいですね。SDカードを取りに行く必要が出てしまうので。
GIS(地図情報システム)にプロットしていく方法にも興味を持っており、常に記録してクラウドへデータ共有していくのが標準になってきそうだなと感じています。

ーコロナ禍で変化したことはありましたか?

共同研究者など、周りでもクラウド化の需要や変化を感じます。
物理的に現地に行かなくてもいいような計測プロセスに研究をシフトしたという話も聞こえてきています。こういったオンライン化は今後急速に進化しスタンダードになっていくのではと感じています。

ー大変参考になります。今後の製品改善も検討させていただきます。ありがとうございました!