ウィズダムアカデミー様と、『mobiSense 環境モニタリングキット』を用いた適切な教室環境を実現するための PoC を実施させていただき、先日、その取り組みが▶︎日経電子版にて紹介されました。

このブログでは、短期間で仮説と検証のサイクルを回すことを可能にした、開発現場の裏側について紹介したいと思います。

mobiSense 環境モニタリングキットとは?

『mobiSense 環境モニタリングキット』をベースに、今回の PoC は実施されました。『mobiSense 環境モニタリングキット』は環境センサ・ゲートウェイ・通信回線・ダッシュボードを1つにパッケージ化したサービスで、機器を設置するだけで、温度・湿度など13種類の指標をモニタリングすることができます。ノンプログラミングでダッシュボードによる可視化や、メール・チャットによるアラート通知を行うことができるため、エンジニアがいなくても、自分たちの手で DX を推進させることができます。

教育現場でのコロナ対策(3密対策)への取り組み

最初の段階では、一通りのデータを収集し、可視化・分析するところから始めました。ウィズダムアカデミー様ともディスカッションを重ねた結果、これら乾燥する冬の季節に向けて「十分な換気と湿度の維持」をテーマに次の PoC を実施することになりました。

課題と解決策(ユーザーストーリー)

最初のトライアルにより、学童保育の現場では次のような課題があることが見えてきました。

  • 現場のスタッフは常にPCの画面を見ているわけではないので、何らかのアクションが必要なタイミングで通知が必要
  • センサ値の履歴だけでは、何が原因で数値が悪化した・改善したかが検証できない

元々、他社様とのトライアルでも、センサから上がってくる数値の変化だけでは、なぜ、そのような変化をしたのかという原因を追うことができず、その場にいた人の活動など、センサ以外から取得できるデータとも照合する必要性を感じていました。

これらを踏まえ、「十分な換気と湿度の維持」を実現するために、以下のようなユーザーストーリーを考えました。

  1. 密状態と乾燥をサイネージで現場のスタッフとお子様に伝える
  2. 同時に、スタッフのスマートフォンにはアラートメールが届く
  3. スタッフは専用アプリで詳細を確認し、実施した対応策(換気や人の分散)を記録する
  4. 施設の管理者は専用のダッシュボードで密状態や乾燥状態が発生していないか、発生した場合にも適切な対応を取られたかを確認する

エンジニアリングとしての取り組み

開発視点では、3つの取り組みが必要でした。

  • CO2濃度の計測
  • 対応記録アプリ
  • リモートでの開発・メンテナンス

この中で、もっとも重要なチャレンジは3つ目の「リモートでの開発・メンテナンス」でした。IoT システムの場合、どうしてもデバイスの側に行かないといけない場合が多いのですが、コロナ禍のなか、教室にお邪魔する回数は極力減らす必要があったため、物理的な操作が必要な作業以外は、すべてリモートを行えることが重要でした。 そこで、開発中であったデバイス管理サービスである『 CANDY LINE Go Live 』のリモート接続機能を実践投入することにしました。

システム構成

システム構成は以下のようになります。

新規にセンサー「おんどとり」(温度・湿度・CO2ロガー TR-76Ui)に対応する必要がありましたが、Node-RED ベースの開発環境である CANDY RED を活用することにより、データシートを参照しながら、数時間で対応することができました。

収集したデータは、同じく Node-RED ベースのクラウドプラットフォームである CANDY EGG に上げています。単にデータを可視化するだけであれば直接 c+ Studio にアップロードしてもよいのですが、対応記録アプリと、3密判定のために、一旦、CANDY EGG にデータをアップロードし、加工したデータを c+ Studio に転送しています。実際の運用では、センサからのデータをそのまま表示すればよいようなケースは少なく、データの加工や、複数のデータソースからのデータを統合するために、CANDY EGG を活用することができます。

行動機能アプリは、スマートフォンに最適化して、シンプルに現在の CO2 濃度・室温・湿度と、実施した対応を記録できるようにしてあります。教室の窓や加湿器などにセンサーを付けることもできましたが、費用対効果の観点から、現場のスタッフに選択してもらうこととしました。また、選択肢を増やしたり、自由入力を行ってもらうことも可能性でしたが、現場への負荷を抑えるために、選択肢は3つに絞りました。

このアプリによって記録された対応は、管理者向けのダッシュボードで、その日の密状態と一緒に可視化できるしました。これにより、教室の環境が適切に保たれていたか、仮に問題があったあ場合、適切な対応がなされたがエビデンスとして残り、現場の指導やオペレーションの改善に役立てることができます。

リモートによる開発・メンテナンス

IoTシステムの場合、開発やメンテナンス、障害対応において、デバイスに直接アクセスしたいケースが多々あります。特に、運用開始後は、エンジニアが現地に赴く必要があり、大きな負担となっていました。されに、コロナ禍により、人が現地に行くという行為自体、非常にハードルが上がっています。

『mobiSense 環境モニタリングキット』では、すべてのデバイスは CANDY LINE Go Live というサービスによって管理されています。デバイスの死活監視や、ファームウェアのアップデートは、台数が少なく、設置場所も近くであれば大した問題にはならないのですが、数千台、数万台というデバイスが分散して設置されるようなケースでは大きな課題となります。

CANDY LINE Go Live により、ファームウェアはリモートで配信できるため、出荷時のキッティング作業はほとんど不要になりますし、出荷後もリモートでアップデートすることができます。死活監視を行うことも可能で、障害を迅速に検知することができます。

それでも、障害が発生した際には、現地に行って、ターミナルにログインしたり、ログを取得する必要がありました。そこで、新たにリモート接続機能を開発しました。この機能は、遠隔から Raspberry Pi 上で動作する CANDY RED にログインすることを可能にします。デバイスにグローバル IP を割り当てたり、NAT にポートマッピングの設定をするなど、特別な設定は一切不要です。また、IoT 向けの低速な通信回線に最適化されており、400kbps 程度の帯域があれば、十分に活用することができます。このリモート接続機能により、在宅勤務のまま、開発・運用・保守を行うことができています。

まとめ

  • ウィズダムアカデミー様と、コロナ対策ために「十分な換気と湿度の維持」を実現するための PoC を実施しました。
  • CANDY RED, CANDY EGG, c+ Studio を活用することで、PoC 向けの開発を数日で完了させることができました。
  • CANDY LINE Go Live でデバイス管理を行うことで、リモートでの運用・保守を実現で来ています。

長谷川 聡(はせがわ さとし)

大学卒業後、メーカーで家電製品の開発に携わる。情シスに移動後、システム連携基盤の構築とグローバルでの導入展開を実施。2014年より、組込みとサーバーサイド、両方の経験を活かし、IoTのコンサルティングに従事。